進化する東証 – arrowheadで、東証は未来の取引参加者に照準を合わせます

By Satoshi Hayakawa
お待たせしました。東京証券取引所の次世代売買システム 「arrowhead」が、いよいよ年明けに稼働を開始します。arrowheadは国内および海外の投資家に高速性・可用性・信頼性をお約束します。東 京証券取引所・IT本部の早川聡がarrowheadの主な特徴をご紹介します。
はじめに
2010 年1月4日、新しい年の幕明けとともに東京証券取引所の株式売買システムが生まれ変わります。「arrowhead」と名づけられた次世代システムは、近 年の世界的な潮流として注文執行や情報送信に不可欠な高速性能を世界レベルで実現するだけでなく、Marketに本来求められる市場の公正性や信頼性をも 最高レベルで併せ持った世界最高水準の取引所売買システムとなります。「arrowhead」が稼働することにより、これまでにも増してTokyo Marketが魅力ある取引環境に変わりますので、今回はその内容をお伝えします。

arrowheadとは
現在のTokyo Marketは、高い流動性と安定感のある市場として一定の評価をいただいておりますが、金融業界における情報通信テクノロジーの高度化と、グローバルな取引市場間
の競争という大きな波の中で、さらなる魅力あるMarketに生まれ変わるため、東京証券取引所では次世代の取引環境として「arrowhead」の構築を決定し、2006年にその概要を公
表 いたしました。「arrowhead」の基本的なコンセプトは、最新テクノロジーの採用によって円滑な取引を継続するために必要な高速性と優れた信頼性を 備え、かつ十分なキャパシティを確保できるといったインフラ面からの強化を行うとともに、市場情報の拡充に加えて取引制度面での変更を行うなど Marketにおける更なる利便性の向上を行うことであり、いわばハードとソフトの両面から強化しております。それでは、新しいTokyo Marketをイメージしていただくため、具体的な「arrowhead」の特徴について以降で詳述します。

高速性
「arrowhead」の最大の特徴の1つは高速性です。ICT技術の高度化により、取引所システムの世界では評価される時間軸が“秒”、“ミリ秒”、“マイクロ秒”といった状況となっており
ま すが、これを世界標準レベルで実現するものです。注文受付から受付通知送信までが10ミリ秒以下、また注文が板登録又は約定してからそのMarket Dataを送信するまでが5ミリ秒以下であることを目標として掲げ、現在開発中のテスト実績では、これをさらに上回る高速な性能を達成しています。現在の 売買システムでは約1~2秒で処理が行われていることから、既存システムに比べ数百倍の高速化が図られるといった抜本的な性能改善がなされており、アルゴ リズム取引や高頻度取引の一層の普及と更なる高度化にも十分に対応できる性能を有しています。

高信頼性
Market に求められる重要な要素として、近年高速性が強調されておりますが、もう一つの重要な要素として信頼性が挙げられます。一般的に信頼性と高速性はトレード オフの関係にあり、取引にかかるスピードを1マイクロ秒でも高速化することを至上命題として捉えた場合、信頼性をある程度犠牲にするといった方向性も考え られますが、「arrowhead」で
は高速化の世界標準を実現するだけではなく、非常に高い次元で信頼性も同時に満たすことを大きな柱として掲 げ、これを実現しています。具体的には、注文受付・執行処理をミリ秒単位で行う中で、注文・約定情報に加えて、刻々と変化する注文板の状態もハードウェア の故障等によって消失することのないよう、異なるサーバー上で3重化して同期処理を行うことにより、取引の完全性を保証しています。また、99.999% という極めて高い可用性を目標としており、業務アプリケーションを開発する際には“単純化”を徹底的に行っています。その他にも多数の最新技術を採用し、 物理的な仕組みでも信頼性を高める工夫を凝らしています。さらに、プライマリサイトが被災した場合に備えて新たにセカンダリサイトを構築しています。

市場情報の拡充
Market Data Feedでは、高速性の項で触れたように情報の発生から送信されるまでの時間を大幅に短縮するだけではなく、配信情報を大幅に拡充し、取引状況の透明性を 高めることによって、これまで以上に身近な市場となります。既存サービスであるFLEX 10Mサービスにおいては、現在値を中心に上下5本の気配情報を送信しておりますが、arrowhead稼
働後の後継サービスであるFLEX standard(100Mbps回線を使用)ではこれを上下8本に増やし、かつ上下9本目以上の情報を集約した累計情報等を送信するなど、情報の拡充を 図っております。さらに、新しくFLEX Fullというサービスを開始し、すべての銘柄のすべての気配情報を送信することも行います。なお、これらの情報は、東京証券取引所の取引参加者だけでは なく、海外も含めた機関投資家から一般投資家まですべての投資家が取得可能となります。

売買取引制度の変更
「arrowhead」の稼働に合わせて、売買取引制度の変更を実施しますが、ここではその中から次の2つをご紹介します。

ティックサイズの一部縮小
全体的な不均衡の是正と分かりやすさの向上を図るため、一部値段帯の呼値(ティック)サイズを縮小しますことから、よりきめ細かい発注が可能となります。

連続約定気配の導入
1 注文により短時間での急激な価格変動が発生することを抑制するため、直前の約定値段から大きく乖離した値段(気配の更新値幅の2倍を加えた、又は減じた値 段)まで一気に買い上がる、又は売り下がる場合に、連続約定気配を表示し一定時間(ex.1分間)売買を保留する機能です。

な お、東京証券取引所ではarrowhead稼働後も、取引所機能に求められる公正な価格形成のために必要な制度は維持し、より魅力ある市場、注文の集まる 市場を目指しています。そこで、これまでの伝統的な信頼性の高い取引制度、具体的には、時間優先・価格優先といった両原則を遵守し、板寄せ、特別気配、制 限値幅、異常注文のチェックなどといった、投資家が安心して発注できる仕組み、適正な資産評価のために用いられる価格発見機能を支える仕組みは、何ら変え ることはなく現在の売買取引制度の方針を引き続き継承しています。

更なる高速・低レイテンシーの実現/コロケーションサービスの開始等
「arrowhead」 の稼働に向け、更なる高速化、低レイテンシーでの取引環境を実現するために、東京証券取引所では2009年7月に全業務システム、取引参加者、情報ベン ダー等を結ぶ次世代ネットワーク網「arrownet」を構築し、運用を開始しています。基幹ネットワークの内部レイテンシーは2ミリ秒以下と従来比10 倍の高速化を実現しつつ、可用性99.999% にまで高めたリング型のネットワーク網を構築しており、将来的には、国際間接続をも想定した拡張性を兼ね備えています。

さ らに、「arrowhead」が設置されるプライマリサイト内にサーバー等機器を設置することを可能とする「コロケーションサービス」も2009年10月 から発注可能となっており、コロケーションエリアから「arrowhead」までの間のレイテンシーは数百マイクロ秒となります。

これらの総合的な高信頼・高速取引プラットフォームにより、ますます魅力ある取引環境をご提供できるようになります。

おわりに
証券取引所が果たすべき本来の役割は何か。そのための取引所システムとは。この問いに答えるべく当社は「arrowhead」を開発しており、その過程では市場関係者と十分に協議を重ねて関係者の理解を得るとともに、高い品質の確保を最優先に考えて、開発ベンダーと一体となったシステム構築を進めております。

こ のたび当社では、先端テクノロジーなど技術の粋を集めた「arrowhead」を2010年に自信を持って世界に送り出します。また、この2009年10 月には新オプション取引システム「Tdex+」を稼働させるなどデリバティブ市場の強化にも意欲的に取り組んでおり、今後とも魅力ある総合取引所市場とし て利便性向上に努めてまいります。

©Markets Media Europe 2025

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