日本のカメ型アプローチの強み – 超スローペースのアプローチは 日本での最良執行に向けた最高の方法だろうか?


CSA の利用によって、取引の流れはより少数の取引場所に集約されることになるのでしょうか?可能性からいえばそうなります。しかし決定要素は最良執行にありま す。同様に、独自の、あるいはオルタナティブ対象のリサーチ・サービスは調査業務だけで自立する必要に迫られ、そうなると執行場所自体も自らの存在意義を 正当化することが必要となります。

表 面的には、日本のオンショアのブローカーにとってアンバンドリングに向けた動きは良いニュースであるようには見えません。もし、ファンド・マネジャーが売 買執行サービスの手数料を直接支払うよう強制されることなく、代替取引の場所、あるいは選好する執行場所を自由に利用し、コミッション・シェア方式でリ サーチ・サービスの手数料を支払うことができるとしたら、有能で重要なブローカーたちの多くが不利益を蒙ることになるでしょう。最良執行の原則が取引ブ ローカーによって満たされない場合、リサーチ・サービスに対する支払を別に求めるのは当然の流れといえます。実際、CSAモデルでは支払いを1ヵ所のブ ローカーに固定する必要がないため、特定の執行場所を通して取引する理由を検証し、理解することをファンド・マネジャーやトレーダーに求めています。

日 本は、地域の、あるいは小規模でも影響力のあるさまざまなブローカーが多数存在しているという点で恵まれています。こうしたブローカーは国内の内情を見通 した貴重な洞察を提供してくれたりファンド・マネジャーに重要な付加価値を与えてくれたりしています。一方で、取引形態が急速にグローバル化している中、 地元の大手企業であることだけでは取引量の維持を保証できないという状況になりかねません。他方、ファンド・マネジャーが取引する必要のある現地市場で は、現地の優れたサービスまたは代理店、あるいは現地のみで執行を行うブローカーが広く求められます。論点は明快で、アンバンドルの品質なのです。

し かし、ブローカーの中にはFIX技術をいまだに導入していないところもあり、それが最良執行と取引相手のリスクという両面から取引を難しくしています。こ うした要因すべてを考慮に入れると、規制当局にとっては現在の執行形態における進展がブローカー・コミュニティに与える影響の大きさをじっくり検討するこ とが二重の意味で重要となっています。

コミッションを守る
日 本がCSA環境に移行する際には、発生後未払いの状態にあるコミッションをいかに守るかが次の課題になります。2008年10月にこの点が注目されるよう になって以来、ファンド・マネジャーは自分たちが支払った手数料が取引後どのように処理されているのかについて厳しく追求するようになりました。不思議と 曖昧にされている問題の一つが、手数料のプールで支払待ち状態にある資金はファンド・マネジャーの資産として維持されるのかどうかという点です。ありがた いことに、この点は常識的で、そうした資金は(少なくとも支払が完了するまでは)リサーチ会社やサービス提供会社の資産ではなく、また、当然手数料プール を保有するブローカーの資産でもないというのが一般的な見方となっています。

今後の最善の方法
今 では最新の取引環境により、市場の入口までの迅速で直接的なアクセスが、概して魅力的な費用で提供されていますが、現状はそれによってバイサイドのディー ラーが執行リスクを負う形になっています。日本で次のステップが何か明確になっていますが、簡単なことではありません。1ヶ所での取引についてCSAとい う概念の中で最良の執行体制を確立しつつ、別のところからサービスを購入することは斬新な取り組みであり、確立されるまでには時間がかかることでしょう。 特に国内のコミュニティではその傾向が強いと考えられます。

日 本での実りの時期はすぐそこまで来ています。FIXプロトコルを基盤とし、IND-Xなど、完全なCSAでサービスを提供している企業には大きな役割が期 待されています。最良執行は市場の緩和によるところが大きく、標準化された電子オーダー・ルーティングによって柔軟性を損なうことなくこのプロセスを簡略 化することができます。最良執行によって透明性が高まり、エラーが低減されます。現在利用可能なベンダー商品をいくつか使うことによって、ポートフォリオ の作成、発注・執行から下流のプロセス、取引コストの分析に至るまで、システムと相互に情報のやり取りを行うことが可能です。日本ははじめてアンバンドル を行う市場となるわけではありませんが、最良を実現するチャンスを有しています。

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